True colors

とある海辺の町に暮らす女子高校生と始めた文通。

四通目、Yuukaちゃんへ

あっという間に時間は過ぎるね。津奈木町から東京に戻って、もう四日も経ちました。もう疲れは取れましたか?

私は自分が物を作る時、傍らにいる人のこともつい、どんどん追い込んでしまうから、例えそれが普通の高校一年生である君のことすら、追い込んでしまったんじゃないかなあと思う。君が君としてあの町に生きていたら、そんな時間感覚で進まなくたってよかったはずなのに。



私はよく、「魔法」と言った。

「魔法を使うと、疲れる」と。

 

私の言う「魔法」が一体どういうものなのか、説明するのは難しいのだけれど、君にはどう映っていたのだろう。それは目に見えるものなんだろうか。

 

私は、本物の「魔法使い」になりたくて、長い時間修行を続けており、終わりがありません。大体においてちゃらんぽらんなので、ずっと落ちこぼれのまま、気付けばすっかり歳を重ねてしまいました。

私の周りにはそれはそれは素晴らしい本物の「魔法使い」さん達がいらっしゃって、私は幼い頃からその背を見、いつか自分もそうなりたいと願い、大人になりました。

それはけして表現者になるということじゃなく、「魔法使い」な漁師さんもいれば、「魔法使い」な保母さんもいます。だけどどの種類の魔法を選ぼうとも「どうやったら本物の魔法使いになれるのか?」という教科書はなくて、自分で探さなくちゃいけないから、大変なの。それは特別なものじゃない。みんな持ってる。
けれどその種はあまりに儚い上に育てるのは大変で、どんなに長い時間を掛けて身につけたとしても、ほんの一瞬で見失って、取り出せなく時もよくあります。そういうときは大抵、深呼吸を忘れているな。と、思います。

そして今

 

自分はとても頻繁に、魔法を見失ったり、取り戻したりを、

繰り返しているように感じています。

 

夕海