True colors

とある海辺の町に暮らす女子高校生と始めた文通。

九通目、Yuukaちゃんへ。

4ヶ月も書かなかったのか私は。何をしているんだろうか。

長い間待たせて ごめん。

7月から11月。

夏が秋になって、もう少ししたら冬が来る。

松本の夜は時折2度になることもあると聞きました。

今日の東京はまるで春が始まったかのように暖かくて上着を持たずに外へ飛び出していったけれど、あなたにもらったマフラーは相変わらず付けて、日々居ます。雪の柄が付いているので秋口にはあまりそぐわないのかもしれないが、ぐるりと首に巻くと安心するので、去年も今年も、洋服が変わっても、大体ぐるぐる巻いてあちこちを飛び回っています。

 

テレビや新聞をみては、怖い、怖い、と肩をすくめていた君を思い出す。去年の今頃よりも今日はもっと世界が傾いているようだね、けれど本当は、ずうっと何もかもは傾きっぱなしで、君は、明日も普通であるだろうかと、夜眠る時に思うと、そう呟いていたけれど、明日も今日も昨日もずっと普通ではなかった人達は絶えないことを、私は、どれだけ忘れないで生きていただろう。と 思う。

 

私の体は小さくて、自分の幸せや、自分が手を触れられる場所にいる人たちの幸せを、まず先に考える。それ以上の想像力を働かせるには、深呼吸がいる。

 

自分にとってのこの喜びが、誰かの寂しさや狂おしさに繋がって眩しく疎ましいものであると、想像しては、私は私を潰そうとする。そういう癖がある。

 

だけど出来る事ならそうではなくて、その、想像した先にいるその人を抱き締めて生きればよいのだと、このごろは思う。

 

私には、私の背の向こうにあるものが見えない。

永遠に見えない。

 

しかしその人にも、その人の背の向こうは見えない。

 

 

「お前に私の苦しみが分かるか」 

 

 

同じ台詞を何度突きつけられたことだろう。

 

 

 

私には、私の苦しみしかわからない。

でも、その人が苦しいことが、私には苦しい。

 

もう少ししたら夜が明けるよ。
熊本はもう寒いの?